甘い愛で縛りつけて
◇「ちゃんと覚えとけ」
「私……」
胸の奥から湧き上がってくる熱い想いを口にしようとした瞬間、保健室のドアが叩かれる音がした。
そして続いて聞こえてくるのは、恭ちゃんを呼ぶ声。
「朝宮センセー、鼻血が止まらないんですけどー」
恭ちゃんは聞こえてきた男子の声に立ち上がると、ベッドの仕切りのカーテンを開けて外に出た。
それから、カーテンをもう一度きっちり引き直す。
「あ……」
せっかく思い切れそうだったのに邪魔されてしまって、思わず声がもれる。
不貞腐れてうなだれていると、カーテンの向こうからドアが開く音が聞こえてきて、恭ちゃんと男子生徒の会話が聞こえてきた。
「この程度の鼻血なら水で濡らしたタオルかなにかで鼻の根元を押さえてれば大丈夫だよ」
「マジっすか? いやぁ、バスケットボールがいきなり直撃して。……これ折れてたりしないっすよね?」
「大丈夫だと思うけど……そんなに激しく当たったりした? 鼻は折れやすいから気をつけないと」
「あー……ですよねー。いや、女子のジャージ姿眺めてたらつい……」
軽蔑しつつ まぁでもそんな年頃なのかなと考え直す。
恭ちゃんも注意するわけでもなく、笑っているようだった。