甘い愛で縛りつけて
「おまえ、何ニヤけて……」
「なんでもないよ。それよりジャージは? 私そろそろ戻らなくちゃ」
「あー、よく絞ってタオルで挟んどいたからもうほとんど乾いてるだろ。……おまえ戻ったらちゃんと上着着ろよ。
つーか、着替えどこ? 持ってきてやるから」
「女子テニス部の部室だけど……。でも、大丈夫だよ。着替えたらすぐ仕事に戻らなくちゃだし。
恭ちゃんが女子テニス部の部室なんか行ったら変質者扱いされて大変でしょ」
恭ちゃんが私に投げたジャージを受け取る。
ちゃんと洗ってから小川さんに返さなくちゃ。
そんな事を考えながらジャージに足を通して、白衣を脱いでから目隠し程度に引いていたカーテンを開けた。
「これ、ありがとう」
「ああ」
白衣を渡すと、恭ちゃんは片手でそれを受け取って袖を通す。
その姿を見つめていると、白衣を着た恭ちゃんが私を見て顔をしかめた。
「なに?」
「えっ、あ、ううん! 私、戻るね。手当ありがと」
カッコいいと思って見とれていたのを悟られないように、誤魔化してすぐ背中を向ける。
そうしてから、やっぱり今、きちんと気持ちを伝えるべきかもって思ったけど……。
今更振り返って告白するのもおかしな気がして、軽くため息をつく。