甘い愛で縛りつけて


言い聞かせるようにそう何度も繰り返してから、重い身体を起こす。
重いのは、バスケで身体を動かしたせいもあるかもしれないけど、もっとも一番の原因は精神的なモノかもしれない。

着替えを持って脱衣所に入って、洗濯機の中にジャージを放り込んでから、服を脱ぐ。

スカートを脱いで、靴下を下ろそうとした時。
内腿についた赤いアザが目に映った。

転んだ時にこんなところまでぶつけたんだろうか。そう思いながら、顔をしかめて覗き込む。

内腿にあるそれは、アザというよりは虫刺されだ。
赤くて歪な形のそれを見ながら、こんなのまるで……と考えたところでハっとした。

「あの時……」

恭ちゃんがつけたんだ……これ。
手当してくれている時、恭ちゃんがキスして……それで。

分かった途端、胸が一気に締め付けられて涙が浮かんだ。
なるべく思い出さないようにしてたのに、赤いアザを見た途端、恭ちゃんとの事が頭に溢れてきてしまって止まらなくなった。

今までの恭ちゃんとの会話、笑顔、キス。
貼ってくれた絆創膏に、赤いアザ……。

あの時はまだこんな事になるなんて思ってもみなかった。ただ恭ちゃんが好きで……それだけだったのに。

一気に押し寄せてきた、愛しさや後悔、名前の付けようのない感情が涙となって溢れ出す。



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