甘い愛で縛りつけて
事務から参加しているのは、事務長と田口さん、そして私の三人。
こういう席はあまり得意じゃないから、「家事があるので」って欠席する人妻事務員がうらやましい。
視線を移すと、事務長は先生方に囲まれて日本酒を飲んでご機嫌そうに笑っていた。
大らかな事務長は、来年度定年を迎える大ベテラン。
勤続35年だよって穏やかな笑顔で話す姿は、大先輩というよりもおじいちゃんみたいだ。
そんな印象を持つのは失礼だって事は分かっているけど、事務長は、新米だった私がそんな風に思うほどに親しみやすい空気をいつでも作ってくれていて。
そんなところも含めて、本当に尊敬するばかりだ。
定年になって辞めちゃうのが今から寂しくなるくらいいい人で、先生の中にも事務長を好きな人はたくさんいると思う。
……それに比べて。
「まぁ、笠原先生は教員にも生徒にも人気が高かったからねー。
でも、笠原先生だけが男じゃないし元気出しなよ。
そんな色恋沙汰で仕事に支障が出たら問題だよ」