甘い愛で縛りつけて
朝宮先生はもう大人ですよ、と言ったけれど。
事務長は私にとっては学校にいる子はみんな子どもみたいなものだと答えた。
大らかで優しい事務長らしい言葉に思わず笑ってしまう。
「理由を聞かれても答えられないから、ただの私の勘でしかないのかもしれないとも思ったし、彼自身関わられるのを嫌っているようだったから、私から特に何かをしたりはしなかった。
彼の事が知りたくて何かと理由をつけて保健室に話に行ったけれど、それは彼の抱えている問題とは別で、彼自身に魅力があったからだ。
話していると楽しくて、つい足を運んでいたよ」
恭ちゃんが前の学校で事務長と一緒だったって言った時、確かにそんな事を話していた事を思い出す。
事務長がよく話にきてたって。
事務長は関係ないと言うけれど、保健室に通っていたのも事務長の心配が形になって表れていたのかもしれないと感じた。
「離れてる間も、彼の事を思い出す事がたびたびあった。元気だろうか、と。少しでも彼自身がいい方向に変わっていてくれればとどこかで思っていた。
でも……先月再会した彼はそのままだった」
事務長がわずかに眉をしかめる。
歳と経験を積んだ事務長には、恭ちゃんがどんな風に見えているんだろう。
私が感じるキズみたいなモノを、事務長も感じているって事なんだろうか。
そう考えて、事務長は恭ちゃんの仮面を暴いている事を思い出した。
恭ちゃんが、事務長には多分バレてるって言っていた事を。