甘い愛で縛りつけて


「愛とはそういうものだろう。時には一緒に傷ついて成長していく。
キミと朝宮くんがどんな愛を育てていくのか、私もあと一年見守らせてもらう事にするよ」

職場の上司相手にする話題では絶対ないと思って恥ずかしくなったけれど、事務長が微笑んでいるから私もなんとか笑顔を浮かべた。

「でも事務長。私が保健室の手伝いに行くのは週に二時間以内にさせてください。それ以上は私の事務の仕事にも支障がでますし、周りも変な目で見ます。
私と朝宮先生に変な噂でもたったら、事務長も見守るどころじゃなくなりますから」

そう告げると、事務長はまた笑って。

「本当に河合さんは真面目だね。上司の命令を隠れ蓑にして職務時間中に恋愛を楽しむことだってできるのに。
でも、純粋で真っ直ぐで強い……そういう部分に朝宮くんも救われているんだろう」

そうだといいですけど……とだけ答えたところで、職員玄関が騒がしくなった。

見ると、田口さんが桜田先生と靴を履きかえながら何やら楽しそうに会話を交わしているところで。
ふたりの姿に慌てて席に戻って仕事をしているふりをした。

事務室に入ってきた田口さんと挨拶を交わした時、視界の隅で桜田先生が私を睨むように見ながら通り過ぎて行ったのが分かった。






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