甘い愛で縛りつけて
だって昨日、恭ちゃんは保健室に桜田先生を残して私を追ってきたわけだから。
桜田先生は絶対に恭ちゃんを止めたハズだから、恭ちゃんはそれを振り切って走り出したんだろうし。
しかも、駅まで走って着いたばかりの電車に乗り込んだ私においつくって、私が保健室を出てすぐに恭ちゃんも出てきたに違いない。
桜田先生からしたら、恭ちゃんが自分より私を選んだって事でかなりプライドが傷ついてるのは簡単に想像できた。
絶対にご立腹のハズ。
そうなってくると……危なくなるのは恭ちゃんと私だ。
証拠を握られている以上、桜田先生の機嫌を損ねたら大変な事になる。
恭ちゃんはそこまで考えて昨日桜田先生を置き去りにしたとも思えないから、恭ちゃんにとっても今は非常事態のハズなのに。
焦ってるのは私だけで、恭ちゃんはちっともピンチなんて感じていない様子だし。
何かしら理由があるんだろうけど……一体どうするつもりなんだろう。
不安いっぱいで辿りついた保健室。
ドアを開けると、デスクに向かって仕事をしていた恭ちゃんがこちらを見る。
そしてドアを閉めて中に入るように言ってから、引き出しを開けて小さな機械を渡してきた。
ライターより少し大きいくらいのサイズの見慣れない機械に首を傾げる。
「これなに?」
「録音機。再生してみろ、驚くから」