甘い愛で縛りつけて
恭ちゃんは、いつか桜田先生が仕掛けてくるのを最初から予想していて、録音機を仕掛けて証拠を残してたって事だ。
しかも、かなり前から……録音されている人数を考えると、恐らくここに赴任してきてすぐぐらいからだ。
そんな時から、もしもの時を考えて準備していたなんて……と少し驚いてしまった。
それと同時に、恭ちゃんはどれだけ先の事を考えて心配して備えているんだろうって、心配になった。
頭がきれるからだとか、それだけの理由じゃない気がして。
そんな気持ちから黙った私を誤解したのか、恭ちゃんは少し不機嫌な顔をした。
「おまえ真面目だから、どうせ盗聴なんてとか思ってんだろ。言っとくけど、仕掛けてきたのは向こうからだからな」
「違うよ。恭ちゃんは……何を不安に思ってるのかなって思って。
何をそんなに心配してるんだろうって考えたの」
恭ちゃんは私の言葉に少し呆然として……それから目を伏せて微笑む。
私がいつも気になっている、あの切ない微笑みで。
「心配なのは……怖いのは、自分だろうな」
「自分って、恭ちゃん? なんで自分が……」
「そろそろ桜田先生がいらっしゃる時間だな」
え、と聞き返す間もなく、保健室のドアがノックされる。
そして笑顔の桜田先生が顔を見せた。
桜田先生の嬉々とした表情が、私を視界にとらえた途端に一気に姿を消して、代わりに張り付いたような作り笑顔が浮かんだ。