甘い愛で縛りつけて
「ごめんなさいね、河合さん。席を外してくれる? 私、朝宮先生に大事な話があるって呼び出されたの」
分かるでしょう?というような嫌味ったらしい微笑みに、私の代わりに恭ちゃんが答える。
「いえ。実紅も同席させたいんですが……いいですか?」
朝宮先生がそう言うなら……と渋々納得した様子の桜田先生が、恭ちゃんの前の椅子に座る。
一方の私は、恭ちゃんに言われるまま、恭ちゃんの後ろに立った。
さすがの桜田先生でも、恭ちゃん越しに私に対して敵意むき出しの視線を向けるわけにはいかないみたいで、睨まれる事はなくほっと胸を撫で下ろす。
恭ちゃんはもしかしたら、そこまで考えて私をここに立たせたのかもしれない。
録音テープで桜田先生を脅すつもりなんだろうし、正直席を外したくもなったけど、当事者である以上ここにいるべきかもしれないと考え直す。
いわゆる修羅場みたいなものに今まで居合わせた事がないのと、本当にうまくいくのかを心配する気持ちから、緊張で胸がドクドク鳴っていた。
「何の話なんでしょう」
未だに嬉しそうに微笑んで聞く桜田先生は、話の内容が告白だと確信しているように見えた。
これから恭ちゃんが何を突き付けようとしているのかも知らずに。
そんな桜田先生に、恭ちゃんも得意の作り笑顔で話を切り出す。