甘い愛で縛りつけて


そういえば、恭ちゃんってどこに住んでるんだろう。
そんな事を考えてから、少し前、登録しとけって携帯番号やらメアドやらを教えてもらった時、赤外線に乗ってご丁寧に住所まで送られてきたのを思い出して。
鞄から取り出した携帯で住所を確認してみると、知っているマンション名が入っていた。

家から歩いても20分ほどの距離にあるマンションは、今年三月に新築されたばかりで外観がオシャレだったから知っていた。

田口さんが引っ越したいってひとりで騒いでいた時期だったから、そのマンションも候補には入れていたらしいけど、すぐに全部の部屋が埋まってしまって見学すら行けなかったって嘆いていたのを思い出す。

恭ちゃんはタイミングよく入れたって事なのか……すごいな。
なんだか明暗を分ける結果に妙に納得してしまって苦笑いがもれた。


「ただい……なに?」

玄関を開けて入るなり、目の前に仁王立ちするお母さんに気づいた。
ニヤニヤしている顔を見ると怒ってるわけではなさそうだなと判断して、靴を脱いでお母さんの脇を通り過ぎる。

「今、車の音したでしょ。誰かに送ってもらったの?」
「……だとしてもお母さんには関係ないでしょ」
「あるでしょ! 誰かとお付き合い始めたならちゃんと報告してくれないと!」
「なんで。私もう大人なのに」
「大人だとしても、一人娘がどんな人と付き合っているのかぐらい把握しておかないと。後で何かあった時困るでしょう!」
「とか言って、絶対に私の恋愛話を聞いて楽しみたいだけだよね。顔笑ってるし、何かあった時困るとかいう感じじゃないし」




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