甘い愛で縛りつけて
「恭介くんのお母さん、千香子さんっていったんだけど、また17歳の頃に恭介くんを生んだの。
それで……色々と耐え切れなくなって出て行っちゃったのよ」
「17……?! すごいね……。そんな歳で生む決心をするほど恭ちゃんのお父さんを想ってたって事でしょ?」
「そういう事じゃなかったと思うわ」
はっきりと否定したお母さんが続ける。
「朝宮さんは愛していたんだけどね。
出逢った当時、千香子さんは水商売してたらしいの。お店で会って、朝宮さんが惚れ込んじゃって、お金を渡して付き合っていたらしいわ。
それでも満足しなかった朝宮さんは、子どもがいれば自分から離れないと思ったみたいで……」
「それで生まれたのが恭ちゃん……?」そう小さな声で聞くと、お母さんが頷く。
「そう。恭介くんを生んでしばらくして、千香子さんはまた仕事をするようになったの。
今思うと、朝宮さんの異常な執着から少しでも解放されたかったからなんでしょうけどね。
朝酔っぱらって帰ってきた千香子さんと会うと、朝宮さんの異常さや、そのせいで恭介くんを生まされた事……人生を壊されたって話してきて、そういう話はすぐに近所中に広まったわ」
「生まされたって……でも、自分も納得したから生んだんでしょ?」
「そうだったんだろうけど……。朝宮さんは議員さんで立場の高い人だったから。千香子さんには相当な圧力がかかっていたみたい。逃げ出せないような」
「……それで?」
聞く話全部が衝撃的すぎて、整理できずに頭の中に散らばっていた。
多分、私の許容範囲を超えてる。
だけど、この話の先に、恭ちゃんのあの悲しそうな微笑みに繋がる原因がある気がして……話の続きを待った。