甘い愛で縛りつけて
「ノートパソコン開きっぱなしだし、昨日の夜見てたDVDも何枚か机の上に出っぱなしだろ」
「……多分、私が自分の部屋を大掃除した直後でもこの部屋より散らかってるよ」
「おまえ、片付け苦手そうだもんな。保健室で片づけやらせても逆に散らかってるし」
「恭ちゃんがキレイ好きすぎるんだよ。……あれ、恭ちゃん、今日眼鏡は?」
「今の今まで寝てたんだからしてるわけねーだろ」
恭ちゃんの顔に眼鏡がない事に気づいて聞くと、呆れたように笑われる。
眼鏡をしてない恭ちゃんが穏やかな顔をしているのが珍しくて思わずじっと見つめてしまう。
私が知ってる眼鏡を外した恭ちゃんは、なんていうか……男の顔してる時しか見た事ないから。
恭ちゃんは眼鏡をホテルでしか、外さなかったから。
「そういえば、最初は黒い縁の眼鏡してたのに、最近はずっとシルバーのだよね。
何本か持ってるの?」
「……よく覚えてんな」
恭ちゃんは本当に驚いたようにそう答えた後、寝癖のついた頭をかきながら続ける。
「最近してるのは、元々は予備として買ったヤツなんだけど、黒いのが壊れたから仕方なく」
「あ、分かった。踏んづけちゃったんでしょ。私も手鏡とかでよくやる……」
「違う。俺はおまえみたいにその辺に適当に置いたりしないし、椅子の上に置いておいてそのまま座って割ったりしない」
「……なんで知ってるの、それ」
確かに事務室で一度そんな事件を起こした事があるけど、恭ちゃんが赴任してくる前の話だ。
恭ちゃんが知るハズのない事を言われて顔をしかめると、バカにしたような顔で笑われた。