甘い愛で縛りつけて
私が恭ちゃんに伝えたい事はなんなんだろう。
眠れずに朝一でここに来てまで伝えたかった想いって、なんだろう。
恭ちゃんが可哀想だとか、慰めたいだとか、そんな単純なモノじゃない想いが確かにあるのに、その気持ちをうまく言葉で繋げない。
それが悔しくて悔しくて、涙が流れた。
俯いて涙を流す私を見て、勘のいい恭ちゃんは何かを感じとったみたいで。
身体を起こしてから、くしゃっと前髪をかきあげて目を伏せた。
「もしかして、俺の事なんか聞いた? だから来たんだろ」
ここまできて誤魔化すつもりはなかったから、素直に頷く。
恭ちゃんは少し黙った後、小さな沈黙を笑って吹き飛ばした。
「だからって何泣いてんだよ。そんな過去の事でおまえが泣く必要なんかないだろ」
「でも……」
「俺は過去の事なんて気にしてない。だから泣くな」
笑いながら私の頭を撫でる恭ちゃんを見上げると、恭ちゃんは優しく微笑んで……目を伏せた。
「俺はおまえがいれば幸せだから。
もう過去がどうとか暗い話して泣くのはやめろ。俺自身気にしてないのに、同情されて持ち出されんのはいい気分じゃねーし」
「本当に気にしてないの……?」
「ああ。こんな事、嘘つく必要もないだろ」
「……本当に?」
「……本当に」