甘い愛で縛りつけて
ぽつりと零すと、恭ちゃんが後ろでふっと笑ったのが分かった。
「そうだな、俺もそう思う。
そんな風に自分の事しか大切にできないようなヤツは悲しいし……人間としてどうかと思うし」
そう言った後、少しあけて恭ちゃんが言う。
「なんで……自分の事しか見えなくなるんだろうな」
恭ちゃんのその言葉が何を指しているのか……直感で分かった。
恭ちゃんが、過去の両親に向けた言葉だ。
「恭ちゃ……」
「で、実紅は俺の事慰めにきたんだろ?」
堪らず振り返った瞬間に言われる。
黒地の細身のパンツに、シャツを羽織った状態の恭ちゃんに笑みを向けられて、何も言えなくなった。
恭ちゃんのシャツのボタン全開っていう状態に驚いたからじゃない。
恭ちゃんが、私の検索を嫌ってわざと言葉を遮った事に気づいたからだ。
「実紅が慰めてくれるなら甘えさせてもらうけど」
「別に、慰めようとか思って来たわけじゃないよ。私はただ……」
慰めたいだとか支えたいだとか、そんな押しつけがましい義務感できたわけじゃない。
じゃあなんでだって聞かれても、正直答えに困ってしまうけど……。
本当にただ、恭ちゃんに会いたかったんだ。
無性に、抱き締めて――。
「ひゃ……っ」
「慰めろよ、俺の事。おまえ全部で、俺を受け止めろ」
組み敷かれた状態で言われた言葉が、いつもとは違う瞳が、とても鋭くて。
身体に突き刺さるようだった。