甘い愛で縛りつけて
恭ちゃんの気持ちに嘘がない事は分かってる。
本当に私を想ってくれてる事も、必要としてくれている事も。……痛いくらいに。
だけどひとつ分からないのはその理由だ。
恭ちゃんだったら私じゃなくても、もっと素敵な女の人を選べるハズだから。
性格は難ありだけど、桜田先生がいい例だ。
男子生徒だけじゃなく、男性教員からも人気の高い桜田先生が欲しがったのは恭ちゃんだった。
きっと恭ちゃんの周りには桜田先生みたいにレベルの高い女の人がたくさんいるハズで。
なのに、なんで私に拘るんだろうってずっと不思議だった。
だから、初めは恭ちゃんの言葉を素直に受け入れる事ができなかったのかもしれない。
恭ちゃんに特別扱いされるような要素を自分が持っていない事は十分分かっているから。
私の頭に優しく触れていた恭ちゃんが目を細める。
愛しそうに見つめられて、胸が締め付けられると同時に恥ずかしくて堪らない気持ちになった。
視線だけでこんな事になるなんて、私はどうかしてるのかもしれない。
「正直、俺にもよく分からないんだよな。
なんで実紅じゃなきゃダメなのか……分からないけど、おまえしか俺の中にはいないのは事実だ」
恭ちゃんは、吸っていた煙草を灰皿に押し付けてから、毛布にくるまったままの私の近くに横になって、私の頭を抱き寄せた。
煙草の匂いは好きじゃないけど、恭ちゃんのだけは特別で、嫌いだとは思わないから不思議だ。
心地いい香りに目を閉じる。