甘い愛で縛りつけて
「引っ越す前は、おまえの事恋愛対象に見た事なんかなかったんだ。
おまえにいくら好きって言われても、可愛いヤツだとは思ってたけど俺ロリコンじゃねーし、本気にもとってなかった。
恋愛対象じゃなかっただけで、大事な存在だった事は今と変わらないけどな」
「あの頃もそんな風に思ってくれてたの? 迷惑ばっかりかけてたのに」
「迷惑だとは思ってなかったって言ったろ。
あの頃は……まぁ、色々あったし。周りが俺を変な目で見る中、おまえだけが真っ直ぐな瞳で俺を見てたから。
誰と一緒にいるのもすげー嫌だったのに、おまえとだけは平気だったんだ。
おまえの隣が、唯一、息が抜ける居場所だった」
胸がジクリと痛む。
誰といるのも嫌だったって恭ちゃんが何気なく言った一言が、胸を刺したように痛い。
そうだったんだろうなとは思ってた。
お母さんの話を聞いた時から、恭ちゃんがずっとツラい思いをしてきた事は想像ができた。
なのに……恭ちゃん本人からその事実を告げられた途端、言葉にできない痛みが心を走り抜けた。
それはきっと、重みのある言葉のせいだ。
恭ちゃんだけが背負っている過去の重みのせい。
毛布の中から出した手で恭ちゃんの背中を抱き締めと、恭ちゃんが話の続きをする。