甘い愛で縛りつけて
恭ちゃんはそう言いながら、いつの間にかついていた保健室のドアを開けた。
笠原先生にあんな事言ってバレたらどうするんだって思いきり責めたかったのに……。
恭ちゃんの声に元気がないから、怒る事をためらってしまう。
さっきも思ったけど、やっぱりちょっと様子がおかしい。
ドアを閉めると、恭ちゃんはデスクではなくベッドに向かった。
仕切りのカーテンを音を立てて開けると、ベッドの端に腰を下ろしてそのまま後ろに身体を倒してしまう。
そして、眼鏡を外すとそれを適当にベッドの上に放り投げた。
その様子に、体調でも悪いのかと思って、仰向けになった恭ちゃんに近づく。
「恭ちゃん、どこか調子が悪いの?」
恭ちゃんの顔を覗き込むようにして聞く。
顔色は悪くないけど……やけに真剣な表情が私の胸をざわつかせた。
「……実紅」
「ん?」
恭ちゃんは白い天井を見つめたまま、落ち着いた声で話す。
「この間、俺んちに来た時言ってた事、覚えてるか?
もし実紅が俺から離れようとしたら何するか分からないって言った事」
「うん……覚えてるよ」
「もしそんな事になったら、おまえは好きにしていいって言っただろ?」
「うん……」