甘い愛で縛りつけて


「何言ってるの……?」
「俺が自分を見失って、例えばおまえに手を上げたりだとか、無理やり何かをしようとしたりだとか……。
そうなったら、おまえは俺から離れろ」

言い聞かせるようにもう一度繰り返された言葉に、呆然としてから静かに首を振った。

「そんなの嫌だよ。なんで急にそんな事言い出すの?
私は、恭ちゃんから離れたりなんか……」
「俺が望んでも?」
「え?」
「俺が離れて欲しいって望んでも、それでも嫌か?」

少し上へとずらした手。
その手の隙間から私を見つめる恭ちゃんは、ひどく切なくつらい表情をしていた。

恭ちゃんが何を望んでいるのか分からなかった。
私が離れようとしたら何をするのか分からないほど、私を必要としてくれてるのに、なんで別れを望むの……?

恭ちゃんが必死に何かを隠そうとしている事は気づいてた。
今私に見せてくれている顔とは別に、違う顔があるってずっと分かってた。

狂気的な感情を持つ部分……絶対的なモノだけを強く求めている部分。
それを私に見られることを恭ちゃんが嫌がって、怖がっている事も知ってる。


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