甘い愛で縛りつけて
だけど……恭ちゃんが言った言葉は私の中に重く沈み消えることなく残っていた。
恭ちゃんは漠然と言ったんじゃなく、将来を見越して言ったんだって分かっていたから。
いつかその時がくるって思うと、いくら恭ちゃんがいつも通りだからといって不安は消えなかった。
昨日一日会えない事が、とても長く感じるほど。
「迷惑かなとは思ったんだ。恭ちゃんは、休みの日はあまり私と過ごしたくないのかなって思ってたから」
カウンターテーブルに頬杖をつきながら言うと、キッチンでコーヒーを入れていた恭ちゃんがこちらを振り向く。
グレイのTシャツに黒のジャージっていう寝ていたままの格好だけど、コーヒーを入れるためか、いつの間にか眼鏡はかけていた。
「恭ちゃん、休みの日でも特にどこか行こうとか誘わないし、ひとりがいいのかと思って」
携帯番号だって、家電だって恭ちゃんは知ってる。
だけど、付き合う前も付き合ってからも、休日に誘われた事はない。
土日どちらか電話をくれたりはしていたけれど、他愛ない話をしただけで、私をどこかに誘い出すモノではなかった。
お互い働いている以上、休日は色々やる事もあるし、恭ちゃんなんか一人暮らしだから余計しなくちゃいけない事もある。
毎日学校で会えてるんだから別にいいじゃない。
そんな風にも思ったけれど、それが少し寂しいと思っていたのも事実だ。