甘い愛で縛りつけて
「あー、悪い。どこも連れてってやれてないし、実紅からしたら不満だよな」
「ううん。恭ちゃんを責めてるわけじゃないよ。
出先で学校関係者に会ったらマズイし」
「別に普通に付き合ってる分には見られたところで問題ないだろ。
ああ、でもそれ気にして帽子かぶってきてんのか。こないだもかぶってたもんな」
「一応。やましい事してるわけじゃないから知られてもいいとは思うけど、知られないに越した事はないでしょ」
「あまり気にする必要はないと思うけど、まぁ、変な目で見てくるヤツもいるかもしれないしな」
「うん。だから、特にどこかに出かけたいわけじゃないの。
ただ……私から部屋に来るばっかりだと迷惑かなって不安になるから、たまには恭ちゃんから誘って欲しいって思っただけで」
私が勝手に恭ちゃんの生活に入り込もうとしているだけで、恭ちゃんはそれを望んでないんじゃないかなって、不安になる。
だから、恭ちゃんからもそれを望んで欲しい、そう思ったけれど……。
恭ちゃんが浮かべた困ったような表情を見て、言わなければよかったと思ってしまった。
「私がこうやって来ること、やっぱり迷惑……?」
頷かれたらどうしよう。
怖くなりながら聞くと、恭ちゃんは私の声が弱々しかった事に気づいたのか、「いや、そんな事ない」と否定してくれる。
だけど、それが本心なのか私を慰めるためなのかは分からなかったから、そのまま見つめていると、バツが悪そうに微笑まれた。