甘い愛で縛りつけて


「俺が実紅を迷惑に思う事なんて何ひとつない。
荷物持って押しかけられて今日からここで暮らすって急に言われても、それさえ迷惑だとも思わないし素直に嬉しい。ただ……」

そこまで言って言葉につまった恭ちゃん。
急かすつもりはなかったからじっと続きを待っていたけれど、恭ちゃんは目を伏せてそのまま黙ってしまって。
痺れを切らせて、先を聞こうと口を開いた時、インターホンが鳴った。

耳を疑って、壁についているインターホンを見る。

まだ朝の7時前だ。
自分の事を棚に上げて言うけれど、こんな時間に訪問してくるなんて普通じゃない。

誰かと思い見ると、インターホンにはスーツ姿の男の人が映っていた。
ハッキリとは見えないけど……50代くらいだろうか。

私と同じようにインターホンを見ていた恭ちゃんが、はぁ、と深いため息をつく。
そして、実紅はここにいればいいから、と言ってから、外した眼鏡をカウンターに置いて玄関の方に歩いていった。

すれ違う恭ちゃんの表情が、雰囲気が、ぴりぴりとしているように思えて心配になる。

誰なんだろう。
こんな時間に訪ねてくるなんて、考えられるのは身内くらいだと考えてハっとした。



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