甘い愛で縛りつけて
あの眼鏡は、恭ちゃんが壊したんじゃなく、お父さんが――。
気付いた時には恭ちゃんに走り寄って庇っていた。
「実紅……っ!」
「いっ……たい……」
お父さんが恭ちゃんを殴りつけようと振り上げた拳は、私の頭にあたっていた。
その反動で、後ろにいる恭ちゃんに思い切りぶつかってしまったけれどそれどころじゃない。
顔を殴られるつもりだったから、覚悟していない部分に衝撃を受けて、頭を抱える。
殴られた左耳の上あたりが痛んで、視界が揺れていた。
「実紅……っ、大丈夫か?!」
「痛いし大丈夫じゃないよ……。割れてない?」
ボケたわけじゃなくて、本当にそれが心配になるほどの衝撃だった。
だけど、血も流れてこなければ視界の揺れもそのうちに治まったからホっと胸が撫で下ろした。
恭ちゃんがひどく心配している顔で私を見ている事には気づいていたけれど、恭ちゃんじゃなくお父さんに視線を合わせる。
睨むように見上げたけれど、お父さんは戸惑う様子は見せなかった。
「なにするんですか」
「君が勝手に割り込んできたんだろう」
「恭ちゃんに、なにするんですかって意味です」