甘い愛で縛りつけて
「びっくりした……」
驚いてバクバク音を立てる心臓は少し痛いほどだった。
それを落ち着かせながら、どうしたんですかと聞くと、田口さんは笑みを浮かべる。
「いえ、一緒に帰ろうかと思いまして」
「ですから、用事もありますし」
「でも、朝宮先生との関係、黙っていて欲しいでしょう?」
「脅す気ですか?」
どいつもこいつもと心の中で毒づきながら聞き返すと、笑顔で肯定された。
「朝宮先生は男の僕から見ても格好いいし、仕事もできてパーフェクトな男です。もちろん、女性にもモテますし。
そんな朝宮先生から恋人を奪えたら、優越感に浸れるだろうなってずっと考えてました」
人間のタイプを10種類くらいに分けたとしたら、多分、田口さんと桜田先生は同じタイプに収まると思う。
人を利用して自分を高めようとするところがよく似ている。
実際は、恭ちゃんを使ったってその人たちの何かが高まるハズがないし、一時のまやかしに過ぎないのに。
だけど、桜田先生にも田口さんにも、そして事務長にまで気に留められている恭ちゃんは、やっぱり人を惹きつけるものを持っているんだとこんなところで再確認する。