甘い愛で縛りつけて


「脅す情報なんかなくても、僕は男ですから河合さんひとりくらい力づくでどうにでもなるんですよ」

耳を疑う発言だった。
だって、そんなの……。

「それ、実行したら犯罪ですよ」

本当にそんな事するわけない。
そうは思っても、可能性を全部否定する事はできなくて声がわずかに震えていた。

嫌な予感がして、鞄を抱きかかえるように持ち変える。
そして、田口さんにバレないように鞄の表ポケットの中にある携帯を操作する。

「最後まで嫌がってる相手を力づくで犯したら犯罪ですけどね。
僕は人数こなしてる分、うまいんですよ。
だから最初は無理やりでも、最後はきちんと相手に欲しがらせてますから後では問題にはなりません」

恭ちゃんの事をよく変態だと思うけど、田口さんもそうだ。
恭ちゃんよりももっと性質が悪いし、下品な笑えない変質者だ。

ポケットから出したらディスプレイの明かりでバレてしまうから、ポケットに入れたまま手探りで操作する。
画面を見ずに公的機関に電話するような技は持っていないから、着信履歴か発信履歴から誰でもいいから呼び出そうと試みるけれど、確認ができないからきちんと誰かに発信できてるかは分からなかった。

じり、と近づいてくる田口さんに、心臓が嫌な音を繰り返してテンポをあげていく。


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