甘い愛で縛りつけて
「比べてみてくださいよ、朝宮先生と」
「離して……っ! 変態っ」
必死に暴れるけれど、がっちり抱き締めている田口さんを押し返す事ができない。
田口さんの車は本当にすぐ後ろに止めてあったみたいで、田口さんの勢いに押されて数歩下がると背中に車体がぶつかった。
このままじゃ本当に車に乗せられてしまうかもしれない。
そんな考えが頭をよぎって、血の気が引いていく。
「やめてくださいっ! やめて……っ!」
なんとかもがいて腕の中から抜け出そうと必死に暴れる。
私がこんなに抵抗しているのに田口さんは余裕なのか「疲れるだけですよ」と笑うから、悔しくて堪らず睨みつけようと顔を上げた瞬間、田口さんの腕から力が抜けた。
どうしたんだろうと疑問を浮かべるより先に、田口さんが膝から地面に崩れ落ちる。
ドサっという音と共に倒れた田口さんにただただ驚いていたけれど、すぐに恭ちゃんの姿に気づいた。
白衣を脱いでスーツ姿になった恭ちゃんの片手には、携帯が握られていた。
それを見て、もしかしてと鞄から携帯を取り出すと、私が着信履歴からかけた相手は恭ちゃんで、それは今も通話中になったままだった。
「ありがとう……。電話越しに場所が分かったの?」
「校門だとか、駐車場って単語が聞き取れたから」
「そうなんだ……。急に襲われて……でも、恭ちゃんがきてくれてよかった」