甘い愛で縛りつけて


『不思議だよな。なんで誰よりも守ってやりたいおまえを、俺が傷つけるんだろうな……。
分かってんなら止めればいいだけの話なのに……それを止められないのも分かってるんだ』

この間恭ちゃんが言った言葉が、不意に頭をよぎる。

恭ちゃんは……今もそんな疑問を自分にぶつけながらも止められない自分に苦しんでるの?
止められない自分を、責めてる……?

そんな風に思ったら、居たたまれない気持ちになって……恭ちゃんを苦しめている自分を責めずにはいられなかった。

恭ちゃんがおかしい事にずっと気づいてたのに……。
なのに、なんでもっと警戒しなかったんだろう。

なんで大丈夫だなんて気を抜いたんだろう。
恭ちゃんを苦しめているのは、私だ。

赤く光って停止を告げる信号機に、恭ちゃんの車が止まる。

いつもかけられているドアのロックは、今日はかけられていなかった。
それがわざとだと気づいて、胸が痛んだ。

恭ちゃんはきっと、私が逃げ出す事を望んでる。
溢れるほどの感情に駆られながらも、きっと心のどこかで私が車から降りて逃げるのを望んでる。


< 301 / 336 >

この作品をシェア

pagetop