甘い愛で縛りつけて
無理やりの、ただ強引なキスだった。
拒みたくはなかったけれど、呼吸をする時間も与えてくれない恭ちゃんに、苦しくなって胸を押す。
恭ちゃんは私に両手をベッドに押さえつけながら唇を離した。
「その名前、おまえの口から聞きたくない」
笠原先生の名前を、恭ちゃんが何度も出していた事に気づいていたのに……なんで、否定する事を諦めてそのままにしてしまったんだろう。
何度も笠原先生の事を言う恭ちゃんに、なんでその度きちんと違うって言わなかったんだろうと、今更思う。
もういいや、なんて……なんで軽く流してしまったんだろう。
なんで、恭ちゃんが納得してくれるまで……安心してくれるまで、違うって、好きなのは恭ちゃんだからって言い続けなかったんだろう――。
私のせいだ。
恭ちゃんを不安にさせた私が悪い。
そう思うも……どうしても、自分をなくすまで感情が振りきれてしまう恭ちゃんの気持ちが分からなかった。
「前に言ったよな。他の男が触ったままじゃ気がすまないって。
約束破ったおまえが悪い」
両手で押さえていた私の手に、恭ちゃんは自分のしていたネクタイをとって、一括りに結んだ。
抵抗をせずそれを受け入れる私を、結び終わった恭ちゃんの瞳が捕える。
その瞳をじっと見つめ返した。