甘い愛で縛りつけて
もう、田口さん、ほんっとにイヤだ。
あんなデリカシーのかけらもない人、事務長にきつく絞られればいいんだ。
歯を食いしばって田口さんにイライラしていると、「俺が可哀想で泣けてくる」とか恭ちゃんが言い出す。
「嘘つかないで。どうせ恭ちゃんだって、今日会うまで私の事なんか忘れてたでしょ。
それに、彼女作らなかったのは面倒くさかったからだって自分で言ったじゃない」
「失礼な事言うな。俺は実紅の事忘れた事なんてなかった。
実紅が遊びまわってる間も、どうしてるか気になってたし」
「だから、私だって遊んでたわけじゃないってば!
……恭ちゃんみたいにモテるわけでもないし、付き合った人だってきっと普通より少ないし」
「でも、俺のキスがうまいと思ったって事は、比べる相手がいたって事だろ」
「いるでしょ、普通……。
だって、もう21だよ? 付き合った人くらいいるよ」
まるで、付き合った事がいけない事みたいに言われて、不思議になりながら答える。
そんな私に、恭ちゃんは顔をしかめた。
「なんか気に入らねーな」
「なにが?」
「飼い犬に指を噛まれた気分だ」
「飼い、犬って……」