甘い愛で縛りつけて
「でも、それを知ったから余計に優等生をやめるわけにはいかなかった」
そう静かに言った恭ちゃんが、わずかに顔をしかめる。
「きっと俺が少しでも問題を起こせば、周りが過剰な反応をするのが分かってたから。
普通のヤツがやったって笑い話になるような事でも、俺がやったってだけで、あんな親に育てられたんだからろくな子どもじゃないって、そういう反応が返ってくる。
それが簡単に想像できたから、それまで以上にうまく優等生を演じるようになった」
ずっと知りたかった恭ちゃんの気持ち。
だけど、恭ちゃんが話してくれればくれるほど、耳を塞ぎたくなった。
「実紅を変質者から助けた時も、周りからの評価が目的だった。
成績は努力次第でどうにでもなるけど、そういう人助けは自分じゃどうにもならないし、そんな場面にでくわしてチャンスだと思ったんだ。
でも……あの時おまえを助けてよかった」
「恭ちゃん……」
「実紅に逢えてよかったよ。
そう考えれば俺のそれまでの人生も悪いモンじゃねーのかもな」
私が握っていた手をどかすと、恭ちゃんはその手を私の頭に回して抱き寄せた。
髪を撫でる手がすごく愛しくて。目を閉じてその気持ちをかみしめる。