甘い愛で縛りつけて
「引っ越してからも結局母親は見つからなかったんだ。
まぁ別に俺はどうでもよかったけど、父親は実紅も見た通り今も必死になって探してるよ」
「お父さん……今はどこに住んでるの?」
「さぁ。俺が大学に進学したのと同時に父親と別れて生活し始めたから、どこに住んでるかは知らねー。
金だけは未だにたまに振り込まれてくるけど、電話だとかは一度もないし番号も知らない。
たまに俺の周辺調べて気になる事があると、こないだみたいに突然来て俺の生活引っ掻き回すだけで他は何も」
「離れてからずっと……?」
恭ちゃんは「ずっと」とふっと笑って答える。
「ただ母親を繋ぎ止めたいだけで作った子どもだし、その役目を果たさない俺になんか興味のかけらもねーんだろうし。
いい子にしてないと、なんて言ってたのも母親が俺の面倒見るのに疲れて出て行ったって思ってたのもあるんだろうけど、俺が品行方正に育たないと父親自身が苦労するからって意味もあったんだろ」
「……自分勝手だね」
「まぁな。だから別々に暮らすようになってスッキリしたのはお互い様だったんだろうけど。
おかげで抑えつけられてきた反動からか、大学では結構暴れ放題だった」