甘い愛で縛りつけて


「十分鬼畜だよ。私のブラウス引きちぎったし」
「引きちぎってねーだろ。ちゃんとボタン……外さなかったか?
なんで取れてんだよ、ボタン……。俺?」

自分のした行為を思い起こして不安な顔をする恭ちゃんに、笑顔を返した。

「たまたま糸が緩んでたみたいで、さっき取れたの。
やっぱり最初は正気じゃなかったんだね」

いつもの恭ちゃんに戻って安心した、と笑うと、恭ちゃんがふっと微笑む。

「そうだな」

意味深な笑みを浮かべる恭ちゃんに、うっかり胸が跳ねるから、それを誤魔化したくてペットボトルを開けてグビグビと水を流し込む。

「せっかく実紅抱くなら、楽しんでしっかり記憶にも留めておかないと損だしな」

しっかり飲んどけよ、と言う恭ちゃんに動揺して思わずペットボトルの水が口からこぼれてしまう。

まったくそんな雰囲気じゃなかったのに急に変な事を言い出す恭ちゃんのせいで、こぼれた水がブラウスに吸収されて肌にぴたりとくっつく。
そこまでダボダボこぼしたつもりもなかったけれど、開けたばかりのペットボトルで量が多く勢いがよかったからか、胸元からおへその辺りまで、まんべんなく濡れてしまった。


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