甘い愛で縛りつけて
「事務長の言うように、恭ちゃんは横柄な態度で強がってはいるけど、本当は繊細で弱いから」
「……おい」
「私なんかで役に立つか分からないけど……恭ちゃんに望まれなくても、私が無人島にでもどこにでも、ついて行きます。
恭ちゃんをひとりにさせたくないし、私もそうしたいから」
いつかした無人島の話。
恭ちゃんは最初訳が分からなそうに眉を寄せていたけれど。
その話は恭ちゃんにとっても印象的だったのか、すぐに思い出したみたいだった。
事務長と、三年も前に交わした無人島の話を。
「それなら安心だ」と微笑んだ事務長とは対照的に、恭ちゃんは呆れ顔で笑って「無人島までついてくるって、ストーカー気質な部分は変わってねーな」とか言っていたけれど。
細められた瞳が優しく感じたのは、私の気のせいじゃないと思う。
柔らかく微笑む恭ちゃんが嬉しくてそれを眺めていると、視線に気づく。
見ると、事務長が私を見て微笑んでいて……。
ずっと引っかかっていた事を思い出し、今が最大のチャンスかもしれないと覚悟を決めた。
「あの、事務長……。実は、私、ずっと事務長に嘘をついていた事があって……」
そう。恭ちゃんと従兄妹だなんて言ってたけど、それは嘘だって、事務長にだけは言っておきたかったから。
他にも細々とした嘘をついちゃったし、できればそれもまとめて謝りたい。