甘い愛で縛りつけて
そう思って口を開いたけど……。
事務長は私が何かを言う前に、片手を上げてそれを制した。
「私は、人の話よりも自分で見たものを信じてるんだ」
どういう意味だろうと思って見ている私に、事務長は穏やかな笑みを浮かべて続ける。
「河合さんは真面目で真っ直ぐで強い芯を持っている。そういう部分を知っていたから、朝宮くんを任せようと思えたんだ。
もし、河合さんが私に嘘をついていたとしても、そんなの大した問題じゃない。
河合さん自身を、私が私の目で見ていい子だと判断したんだから」
「だから、思い悩む事なんてないんだよ」と優しく微笑む事務長に、堪らない気持ちになってしまった。
こんなにも寛大で優しい人を、私は知らない。
思わずガバっと頭を下げると、事務長は微笑んでから、今度は恭ちゃんに視線を移す。
「というわけだから、朝宮くん。
言うまでもないと思うが、大事にすると約束して欲しい。
河合さんはきっと、朝宮くんが逸れた道に足を踏み入れたら本当にその後を追う子だ。
河合さんを危険な道に迷いこませたくないなら、河合さんを……河合さんと自分自身を大事にして欲しい」