甘い愛で縛りつけて
「いってきますのキス、忘れないでね」
昔々、私が恭ちゃんに送りつけたラブレターに書いた言葉。
それに気づいたのか、恭ちゃんがふっと笑う。
「あと、実紅以外と手を繋ぐなだっけ」
「それと……」
他には何があったっけ。
少し恥ずかしく思いながらも考えていると、恭ちゃんが言う。
「真っ白のウエディングドレス着て、教会で式上げるんだろ。あと、庭付きのデカい家」
キスや手を繋ぐなんて事はまだ可愛いと思えるけど、庭付きの大きな家だとかには苦笑いがこぼれた。
あの頃はただ憧れてただけだけど、今はもう色々分かっているせいで、やけにシビアな願い事だなとしか思えなかった。
庭付きの大きな家なんて、公務員の給料じゃ難しいのは私にも分かる。
それに、あの頃は年齢的な問題で王宮レベルの大きな家に憧れていたってだけで、今は家だとかに拘っているわけじゃないし、恭ちゃんとだったらアパートでもなんでも、普通に暮らせればそれでいいと思うし。
けれど、恭ちゃんが「全部叶えてやるよ」とか言い出すから、驚いて隣を見上げた。
「実紅が望むもんなら全部叶えてやる」
優しく微笑んでそう言った恭ちゃんが、少し表情を曇らせる。