甘い愛で縛りつけて
学校事務は接客業ってわけではないけれど、ほとんど同じ部屋で仕事をする以上、こんな人でも蔑ろにはできないし、これも社会人の勤めだと割り切る。
仕事だ、仕事。
「大丈夫です。笠原先生は生徒の話をいつも親身になって聞いていて、そういうところを素敵だなと思っていただけですから。
恋愛感情を持っていたわけでもないですし」
「またまた。そんな強がらなくてもいいって。今日くらいは落ち込んでもいいんだよ。
ほら、ここ空いてるし」
「……田口さん、酔ってるんですか?」
気を落とすなって言っておいて、落ち込んでいいって一体どっちだ。
自分の肩を差しながら、ここ空いてるしなんてつまらない事を言う田口さんにはもう苦笑いを返す事もできずに、口調が厳しくなってしまう。
田口さんの肩が空いていたところで私にはなんら問題ないし関係も興味もない。
そんなつまらない事言い出すなら、いっその事、その肩脱臼してしまえとすら思う。