甘い愛で縛りつけて


恭ちゃんから少し離れた場所には違う人だかりがあって、その中心には華やかな笑顔を向ける桜田先生の姿。
男子生徒に囲まれている桜田先生が、さっき田口さんが言っていたマドンナ先生だ。

確か30歳で、二年前この高校に赴任してきたっていう桜田先生は、濃いメイクと派手なパーマが特徴的で遠くから見ていてもフェロモンが飛んできそうな感じだ。

ああ、そういえば桜田先生も茶髪だ。
その辺、校長先生がどう感じてるのかは不明だけど、桜田先生じゃ注意できずにいるのかも。

うちの高校の男性は、生徒だけじゃなくて教員も桜田先生を気に入ってるから。

「ところで、先週の飲み会、どうして先に帰っちゃったんですか?」

桜田先生の茶色い髪を眺めていると、しつこく話しかけてくる田口さんにそんな事を聞かれる。

「お手洗いに立ったら、急に気分が悪くなってしまったので。
事務長には一言言って帰りましたけど」
「それは聞いたんですけどね、送って行くって話してたのに先に帰るなんて思わなかったので」

そんなの勝手に田口さんが言ってただけで約束も何もしてないじゃないですか。というか、あれ以上田口さんと話していたくなかったから何も言わずに帰ったんですよ。それくらい分かれ、このボケ。

……とは言わずに、愛想笑いで「すみません」とだけ言っておく。


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