甘い愛で縛りつけて


「そうなんです。私も先週の飲み会で顔合わせてびっくりしたんですけど。
だから、思い出話をしながら送ってもらったんです」
「そうだったんですか……。いや、驚きました」

信じ込んでいる様子の田口さんに、胸を撫でおろす。
ホっと息を吐くと、隣から伸びてきた手に、急におでこを触られた。

驚いて振り向くと、そこには心配そうな顔をする恭ちゃんがいてさらに驚く。

「触らないでください」

思いきり動揺して、気持ちとしては恭ちゃんの手をバっと払いどけようとした。
でも、田口さんや他の生徒の目がある今、あまりうろたえるのも注目を集めてしまうだけかもしれないと瞬時に判断して、なるべく平然を装って恭ちゃんの手を静かに、そしてにこやかに払う。

我ながらいい対応だったと思っていた私を、恭ちゃんはどういうわけか、まだ心配そうに眉を寄せたまま見ていた。

「やっぱり。実紅、熱がある」
「……は?」

ふぅ……っと色っぽいため息を落としながら、困ったな、といった表情を向ける恭ちゃんには、ハテナマークしか浮かばない。
熱なんかないのになんでそんな嘘つくんだろ。なんて思って見ていると、恭ちゃんが田口さんに視線を移す。



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