甘い愛で縛りつけて


しかも、飲み会の時の会話からすると、恭ちゃんと事務長は前の学校で一緒だったみたいだから、事務長の人の良さは恭ちゃんだってきっと知ってるハズなのに。

そう考えて、そういえば、とあの時の会話を思い出す。

『私が気にしていたのは、仕事面ではない。君も分かっていただろう?』
『ただの年寄りのお節介だ。
とはいえ、一年間同じ場所で仕事ができるとなると、またいらない世話を焼いてしまいそうだがな』

事務長は変な事言ってたけど、あれってどういう意味だったんだろう。

会話をそのままとると、事務長は仕事面以外で恭ちゃんを気にかけてたって事だ。
つまり、プライベートで何か世話を焼きたくなるような事が恭ちゃんにあるって事?

気になって隣を歩く恭ちゃんに聞こうと顔を上げて……また俯いた。
周りからの視線に気づいたから。

体育館に残っている生徒、というか、女子生徒から注がれる視線が痛い。
突き刺さるくらいの視線を感じて、この場で恭ちゃんと話すなんて事、私にはできそうもなかった。

あまりに注目されて、赤くなった顔を両手で隠していると、周りの視線なんて気にしてない様子の恭ちゃんが話しかけてくる。
さっきから気になってる、変な口調で。


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