甘い愛で縛りつけて


まさか、そんな気持ちだった。
だって、私は恭ちゃんと初めて出会った小三の時から中二までずっと一緒にいた。
その六年弱、恭ちゃんはずっと優しくて穏やかな恭ちゃんだったし、それが嘘だったなんてハズがない。

だけど、今の恭ちゃんが昔の恭ちゃんとはあまりにかけ離れて変わってしまっているのを見ると、今の話が嘘だって言い切れる自信もなくて。

「全部……嘘だったの?」

隣に並んで確認するみたいに聞いても、恭ちゃんは黙ったまま窓の外を見ていた。

恭ちゃんが見つめる空は、春独特の霞を浮かべていて少しくすんで見える。
そんな空をしばらく眺めた後、恭ちゃんはやっと私の問いに答える。

淡い水色を見つめたままの瞳は、空ではなく、どこか遠くを見つめているみたいに見えた。

「嘘っつーか、昔の俺は……まぁ、生きやすい道を選んだ結果かな」
「生きやすい?」

生きやすい道。
恭ちゃんが答えた、答えとしては難しすぎる言葉を、頭をフル回転させて解こうとしてみる。

昔の恭ちゃんが、生きやすい道を選んだ結果だって事は、つまり……。
昔は地の恭ちゃんのままじゃ生き難かったって事になる。

だから、楽なように穏やかで優しい恭ちゃんを演じていたって事?





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