甘い愛で縛りつけて
「そこまで想ってくれてるなら、俺の事をもっと信じてよ」
恭ちゃんに顎を掴まれて、無理やり視線を合わせられる。
優しい微笑みを浮かべている恭ちゃんと目が合うと、余計にイライラが増した。
……違う。
こんなの、違う。
「実紅が好きだったのは、俺だろ?」
ゆっくりと近づいてくる恭ちゃんがキスしようとしているのが分かって、ぐっとその胸を押した。
そして、見上げて聞く。
「“俺”って誰?」
急に突拍子もない事を聞いた私を、恭ちゃんは不思議そうに見ていた。
「どういう意味?」
「確かに、私が好きだったのは六年前の……優等生を演じてた恭ちゃんだよ。
けど、嘘だったんでしょ? そんな恭ちゃん、最初からいなかったんでしょ?
なのに……偽ってる自分を、“俺”なんて呼ばないでよ」
伝えたい事が、うまく言葉にできない。
今ので恭ちゃんに伝わったかも分からない。
もどかしくて仕方ない気持ちで、何かうまい言葉はないかって探している間、恭ちゃんは困惑したみたいな顔で私を見ていた。