甘い愛で縛りつけて

「本当の恭ちゃんでいてよ」

私が好きだったのは、優等生の恭ちゃんで、少なくとも六年前まではそれが嘘だなんて疑った事もなかった。
なのに……なんでこんなにも、目の前の恭ちゃんに違和感を感じるんだろう。

好きだったのは、今、目の前にいる昔の恭ちゃんなのに。
心がそれを拒絶してる。

おかしな話だけど、でも、確かに。
違うって、身体全部が拒絶してる。

「嘘の恭ちゃんじゃ嫌」

私の好きだった恭ちゃんは、優しくて穏やかで落ち着いた口調で。
そんな恭ちゃんが好きだった。

大好きだった。

だけど、違うんだ。
それは、あの恭ちゃんが本当の恭ちゃんだって信じて疑わなかったからそう感じてただけ。

演技だって気付かなかったから、好きだったんだ。
嘘の恭ちゃんだなんて知らなかったから、好きだってただ笑っていられた。

でも、あの頃の恭ちゃんが嘘だって知った今。
本当の恭ちゃんを知った今、私が求めるのは……。

演技なんかじゃない、本物の恭ちゃんだ。