甘い愛で縛りつけて
昨日、体育館にいる時も女子生徒からの視線を土砂降りに浴びながらも平然としてたし、きっと恭ちゃんにとってはいつもの事なんだな。
そういえば、昔もそうだったっけ。
近所のおばさんたちの視線を集めて歩いて……あれ?
でも、あの頃の恭ちゃんは黒縁眼鏡と厚ぼったい髪型だったのに、なんで見られてたんだろう。
今みたいにイケメン美形オーラみたいのだって出てなかったハズなのに。
「実紅、何考えてる?」
「え……ああ、昨日振り払われた手が痛んだだけ」
嘘をつくと、恭ちゃんは苦笑いを浮かべた後、バツが悪そうな顔をした。
「悪かったよ」
「本当だよ。ほっぺが腫れてるのを心配してちょっと触っただけなのに勢いよく振り払うし、その後も急に保健室から追い出すし。勝手すぎるでしょ」
「だから悪かったって言ってんだろ」
昨日、本当の恭ちゃんがいいみたいな事を言ってしばらく見つめ合った後。
恭ちゃんの左頬に、そっと手を伸ばした。
眼鏡が違うって話をした時から、ずっと左頬が腫れてる事が気になっていたから、どうしたんだろうって思って。