甘い愛で縛りつけて
なのに驚いた顔をした恭ちゃんに思いきり振り払われて。
びっくりして呆けている私に、恭ちゃんは目を合わせる事なく私の上からどいて、もう戻れと言った。
それからずっと、何かマズイ事でも言ったのかなとか色々考えていたのに、今日は普通に話しかけてくるしで意味が分からない。
もしかしたら自分でも気づかないうちに何か気に障る事を言っちゃって、嫌われたかもしれないって不安になったりもしていたのに。
こっちの気も知らないで普通に接してきたりして、本当にどういうつもりなんだろう。
それを言ってやりたい気持ちは山々だったけれど……。
言った時点で、私があんな些細な恭ちゃんの仕草を気にしていたって自滅にもなりかねないから黙っておく。
何より、恭ちゃんが普通に接してくれることに安心した気持ちが大きかったのかもしれないけれど。
「昨日言いそびれちゃったけど、もう事務長に嘘つかないでくださいね、“朝宮先生”」
「朝宮先生? せっかく親戚って事になってんだから、普通に呼べよ」
「無理。その嘘を学校中に浸透させるつもりもないし、必要最低限の人だけにしか親戚って事は言わないようにしたいの」