孤独と嘘と愛に騙されて。
「 別にわざわざそんなことしなくていいよ。 」
玲太の胸に顔が当たりそうになって
心臓がバクバクして落ち着かない。
だって近いんだもん。
近すぎるんだもん。
それでも彼はお構いなし。
「 お前だって女だろ?混んでるし。 」
いつもより強い口調で、
冗談抜きの表情で。
ほらもっと、心臓がうるさくなる。
こんなんじゃ、気持ちが揺れちゃうかもしれないでしょ?
...になっちゃうかもしれないでしょ?
気持ちがふらふらして
自分が分からなくなって、
玲太の腕の中から抜けようとすると、
彼はいっそう私の頭を押さえる腕の力を強くした。
「 痛いって 」
そう呟いて
顔を上げると
愛しい人を見るような目で微笑む彼がいた、
そんな顔、しないでよ。
あくまでもフリなのに。
そして
ただでさえ近い距離がもっと近くなるの。
そう唇が近づくほどに。
これが玲太のいじわる。
玲太はいじわる。
唇が触れそうな距離なのに、
触れないの。
その至近距離のまま私が降りる駅まで
そのままでいるの。