孤独と嘘と愛に騙されて。
ああだ、こうだ考えてる間に
会話は終わってしまったみたいで。
重いドアがギィっと音を立てて
勢いよく開いた。
その音に、
私も、
声の主も驚いて
「そ、あ、何も聞いてませんからっ」
重い口を開いて
誤解されないように必死な言い訳。
どこかで聞いたことがあったような主の声。
それが誰なのかわかった瞬間
心臓がドクンと飛び跳ねた。
「気にしなくていいからねっ」
そう一粒の涙を零しながら
無理をしているような笑顔を見せる彼女。
鈴木春(すずきはる)先輩。
3年生で一番可愛くて一番モテる先輩。
女の私でも
春先輩の笑顔にはきゅんとしてしまう。
そんな先輩の泣き顔なんて、
見たくなかったなあ。
苦しそうに笑うその笑顔も。
私が昇ってきた階段を下る先輩。
その小さな背中を戸惑いながらも見送った後、
勢いよく開いた反面
ゆっくり閉じようとする扉に目を移した。