意地悪なキミに、スキをあげる。




「朝陽さん…呼ばれてますよ」




腕を掴まれていない方の手で、朝陽さんのエプロンをクイクイッと引っ張ると




「すぐ行くから、静かにしろ」




そう言いかけて、あたしをぎゅうっと抱きしめた。


それはもう隙間なく。




ね、ねぇ朝陽さん…?



朝陽さんさっきから、言葉遣いと行動が真逆ですよ…?



誘拐するって怖いこと言ってたくせに、

どうして抱きしめる手がそんなに優しいんですか?




抱きしめられた手が緩んで、静かな書庫の中で朝陽さんの息づかいが聞こえた。




ちゅって小さな音を立てて、

何度も何度もキスされた。



はっ…恥ずかしい、です…。




「俺思ったよりお前のこと、すき」


「…っ?!」


「…超、すき…」




甘いその声に、意識が飛びそうになるくらい、



声も、キスも、腕も、

何もかもが甘くて。



暗闇の中でよかったって、心底思いました…。



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