意地悪なキミに、スキをあげる。




「あとは…」




そう言って、個別に手紙を用意した子達がガタガタと席を立つ。




あたしはなるべく一番最後に渡せるようにゆっくり教卓の前に向かった。




みんなの中に紛れたく無くて、一番最後に渡そうって昨日の夜に決めた。




そして

前の子が渡し終わって、目の前に朝陽さんが見えた。




「あ…先生…。 数学、本当にありがとうございました」




いざ目の前に立つと、言おうとしてた言葉も全部忘れてしまって

頭が真っ白になってしまった。




手紙の内容と同じことしか言えてない…。



なんか、

なんか言いたいよ。




そんなあたしを見透かしてか、朝陽さんはあたしに向かって微笑んだ。




「数学、わからなくなったらいつでも聞けよ?」

「えっ……?」

「白崎俺の話聞いてる?」

「きっ聞いてます!」




< 275 / 309 >

この作品をシェア

pagetop