君と過ごした100日間は。
プロローグ
「蓮斗の嘘つきっ!」
小さな手のひらが頬に当たった“パチン”という音が、今まで静かだった部屋に響いた。
「ずっと一緒にいるって約束したじゃん・・・っ」
「雪菜、ごめん」
「なんで? 蓮斗、どこに行くの・・・? ゆきな、置いていかれちゃうの?」
横にいるお父さんの顔をチラっと見ると、とても悲しい顔をしていた。
「パパ、蓮斗とどこに行くの?」
「・・・遠いとこだよ」
「ゆきなだけひとり? そんなの嫌だよ・・・。 ゆきなは蓮斗とずっと一緒だよ?」
「雪菜・・・今までありがと。 ずっと大好き。 またいつか、会えるからね」
お父さんが玄関の方へ歩き出したあと、僕も後をついていくようにして雪菜に背を向けた。
「れ、蓮斗待ってよ! やだっ! 蓮斗っ!!」
雪菜の泣き叫ぶ声は、外まで聞こえていた。
叩かれた頬がまだズキズキと痛む。
僕は涙を流しながら、お父さんと車に乗って行った。
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