君と過ごした100日間は。


僕は、雪菜に近づいた。


「芦川さん」


そう後ろから話しかけると、ホッとしたような笑顔で振り向いた。


「芦川くん! 私、芦川くんずっと探してた! どこにいたの?」

「ごめん。 ちょっとそこらへん歩いててさ」

「なんかいつもごめんね。 一緒に帰る約束とかもしてないのに」


雪菜は申し訳なさそうに俯いて言ったけど、僕は逆に嬉しかった。

10年間会えなかった妹と、こうしてまた一緒にいられるなら。

そう思っていた。


「全然っ。 僕も帰る人いないからさ、いつも一緒に帰ってくれてありがとね」


雪菜は一瞬顔を上げたが、「えへへ・・・」と照れて、また俯いてしまった。


「寒くない? 早く帰ろっか」

「あっ、うんっ!」


まるでカップルみたいなこの会話。

僕は妹だからってわかってるけど、周りから見たら、絶対誤解されるよね・・・。

なんて思いながら、先に僕が歩き出すと、慌てて雪菜もついてきた。

なんかひよこみたいで可愛い。

でもその「可愛い」は、あくまで兄から見て思ったこと。

決して、恋愛対象としての「可愛い」ではない。
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