君と過ごした100日間は。


「私は、あまり覚えてないんだけど・・・、私・・・お兄ちゃんを叩いちゃったんだ・・・」


あ・・・。

そうだ、10年前、僕が家を出て行く前に、雪菜に叩かれた・・・。

叩かれて当然だよね。

僕、雪菜との約束破ったんだから。


「お兄ちゃんとね、『何があっても、絶対ずっと一緒』っていう約束をしたの。 でもお兄ちゃんは10年前に、お父さんとどこかに行っちゃった。 ずっと一緒って約束したのに、それが許せなくて・・・」


そうだよね・・・。

絶対って言ったのに、今は離れてるんだもんね。

許せないよね・・・。


「すごく怒ってた気がしたんだ。 でもそれ以上に悲しかった・・・」

「芦川さ・・・」

「ね、芦川くんも、そんな感じだった?」


僕に見せてくる、少し悲しげな微笑みが、僕の心を苦しめた。

雪菜はこんなに悲しい思いをしているのに、兄妹であることを知っている僕が、何も言わないなんて・・・。

悲しかった・・・。

確かに僕も悲しかったと思う。

4歳になる前まで、僕はずっと永遠に雪菜と一緒に居ると思っていたから。

でも・・・。


「僕は、怒りも悲しみもあまり感じなかったと思う」

「え? どうして? 寂しくなかったの?」

「寂しかったけど、しょうがないことだったし・・・」


そう言うと、雪菜は俯いてしまった。

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